事務未経験の派遣社員が入社してきた話

私が産休に入る前、求人を募集して、やっと入社してくれた方が未経験の方だったときのお話です。
産休前にやってきた救世主…のはずが
私は産休を控えていて、仕事の引き継ぎを急いでいました。求人を出していても2か月間いい人材に出会えず、引き継ぐ相手がいない焦りを感じていました。
新しい人が入るまで徹底的にマニュアル作成をしたりしている日々でした。
そんなときに上司から、「やっと派遣社員さんが見つかった」と聞いたときは、「ああ、これでなんとかなる」と胸をなでおろしました。
事務未経験だけど基本的なPC作業はできると聞いていて、最初からそこまで難しい業務をこなしてもらおうと考えていなかったので、なんの心配もしていませんでした。
でも現実は、そんなに甘くありませんでした。
元パティシエの彼女
やってきたのは27歳の女性で、前職はパティシエ。
人当たりもよく、最初の印象はとても真面目でいい子でした。

パティシエから事務に転職って、すごい方向転換だなぁ
しかし、いざ仕事を教えてみると、驚きの連続。
まず、タイピングがとても遅いんです。名前を入力するだけで1分以上かかってしまうので、横で見ている私は気が気じゃありませんでした。
さらに驚いたのは、ビジネスメールを知らなかったこと。
「お世話になっております」というフレーズにさえ、「一番最初の挨拶はそれでないとダメなんですか?」と聞いてきて、思わず返事に詰まってしまいました。
他にも、取引先の方に挨拶メールのCcに私を入れずに送信していたり(そもそもCcの機能を知らない)、私が予想をしていない行動をするので、自分の業務どころではありませんでした。
引き継ぎどころではなくて
私の仕事は、資料の作成や請求書の処理、取引先へのメール対応など。どれも事務としては基本的なことですが、彼女には一からすべて説明しないと進みませんでした。
WordやExcelはもちろん、ショートカットキーも知らない。Ctrlキーの存在さえ知らなかったときには、「え、そこから…?」と心の中で叫びました。
結局、引き継ぎというより、パソコン講座のような日々になってしまいました。産休を前に仕事を減らすどころか、逆に増えてしまった気分でした。
上司にイライラした日々
そんな日々が続くと、だんだん私の心にも余裕がなくなってきました。
引き継ぎを急いでいるときに、正直「なんで未経験の人を採用したんだろう?」という思いが強くなっていったのです。
上司には彼女が入社して3日目に、正直な感想を伝えました。
上司も私が産休に入ることで、業務が滞る心配はしていたので、話は聞いてくれましたが…

彼女のPCスキルがあまりにも未経験すぎて…おそらくこれでは引き継ぎになりません

そんなに難しい業務あった?

引き継ぐ内容には難しい業務は特にないのですが、それ以前の問題で…タイピングが遅くて、通常10分で終わる業務も30分ほどかかったり…

彼女に家でタイピングの練習してもらうように伝えたら?

PCは持っていないようで…

会社のPC持って帰っていいって伝えてみて!

派遣さんで持ち帰っている人は見たことありません…そういった指導は上司からお願いできませんか?

んー、PCの基本操作はできるって言ってたのになー…

Excelで行の挿入すらできませんでしたよ…

あと1週間くらい、様子見てみてよ。こっちも引き続き募集は出しておくようにするから。

それであれば今は未経験は採用しないでほしいです!

そうなると人が集まらなくてさー…
返ってくるのは「どうにかならない?」「できるって言ってたけどなー」というどうにかしてくれみたいな他責な発言ばかり。
そのたびに心の中で「いやいや、今は“頑張って覚える”段階の人じゃなくて、即戦力になる人を採用してよ!」と叫んでいました。

妊婦で体力もすり減ってるのに、定時に帰れないし、もう限界…
産休までの時間は限られているのに、その焦りをわかってもらえないのが余計にストレスでした。
なんなら、妊娠した私が悪いのか?とさえ思わされました。
人柄は悪くないけれど
それでも彼女はいつも一生懸命で、何度も「すみません」「頑張ります」と言ってくれました。
決して悪い人ではないんです。むしろ真面目で明るい性格の方でした。
ただ、やっぱり事務職は「いい人」だけではどうにもならない仕事です。
派遣社員として来てもらう以上は即戦力が求められるので、パソコンに慣れていないと現場は本当に大変です。
電話対応をしながらPC調べものをしたり、対応力を問われる仕事だと実感しました。
事務未経験で挑戦する人へ
今回の経験で思ったのは、事務職未経験であっても、やっぱり最低限のパソコンスキルは必要だということです。
タイピングがある程度スムーズにできること。Excelで足し算やオートフィルくらいは使えること。メールの基本的な文面を知っていること。これくらいができて初めて「事務職の入口に立った」と言えるのだと思います。
「働きながら覚えればいい」と思う人もいるかもしれません。でも、実際に引き継ぐ立場になってみると、それがどれだけ周りに負担をかけるのかを痛感しました。
だからこそ、これから事務職を目指す人には、少しでも準備をしてから挑戦してほしいと強く思います。

そしてその後、
彼女への引き継ぎを行う日々は、正直とても大変でした。
でも同時に、頑張っている姿勢を間近で見て、私自身も初心を思い出した気がします。

私も新入社員のときは、こうだったのかも…
ただ――最終的に彼女は、入社して1か月半ほどで急に来なくなってしまいました。派遣会社の担当者から「本人の希望で退職することになりました」と連絡が入ったときは、驚きと同時に脱力感でいっぱいになりました。
産休まで残り1か月半。ここからどうするのか、頭が真っ白になったのを覚えています。
急いで新しい求人を出し、ドタバタの中で採用活動を進めました。
運よく、産休に入る1か月前に事務経験者の方が正社員で入社してくれて、ようやく安心して引き継ぎを進めることができました。

残り1か月しかないと聞いてますが、できることはなんでもおっしゃってくださいね!

本当にありがとうございます…!涙
事務経験者で入社してくださった方の発言に安堵し、本当に助けられました。
事務職は誰にでもできるわけではない
あのときの経験は、産休前の私にとって本当に大きな試練でした。未経験の人を責める気持ちはありませんが、やはり事務職は「簡単そう」に見えて、意外と多くのスキルを必要とする仕事だと改めて実感しました。
だからこそ、これから事務職に挑戦しようと考えている人には、最低限のパソコン操作やビジネスマナーを身につけてから飛び込んでほしいと思います。それは自分のためでもあり、一緒に働く仲間のためでもあると思いました!
